2024年07月18日
昭和の初期まで、小樽はニシン漁で栄えていました。市内に残る歴史的建造物は、このニシン漁に由来するものがたくさんあるのですが、その中から人気漫画「ゴールデンカムイ」にも登場する「にしん御殿 小樽貴賓館(旧青山別邸)」をご紹介します。
旧青山家は、青山留吉・政吉の親子2代で明治から大正にかけてニシン漁で巨万の富を築いた小樽市祝津の網元で、「ニシン大尽」と呼ばれていました。小樽から留萌にかけて漁場約15箇所、漁船約130隻、使用人約300人を有していた北海道有数の漁業家で、1914年(大正3年)頃には1万石(7,500t/現在の価値で約25億円)以上ものニシンを水揚げしていたと言われています。
大正時代に青山家が建てた豪華絢爛な別荘。建坪約190坪の木造2階建てで、東京都内の有名デパートが約50万円で建築できた時代に、30万円以上もの大金と6年半もの歳月を費やし、総勢50人以上の職人が技を競って建てました。
当時日本一の大地主と呼ばれていた山形・酒田の本間邸の豪華さに触発され、それを上回るものを建てたいとの情熱で、その時代の美術と建築技術の粋を集め、建材から装飾に至るまでこだわり抜き、贅を尽くした建物。欄間や軒下に施された彫刻や狩野派の流れを汲んだ絵師たちが描いた襖絵も見事で、まさに「北の美術豪邸」と呼ばれるにふさわしい建築物です。
旧青山別邸は、2010年(平成22年)に国の登録有形文化財となりました。ちなみに、旧青山家の本邸は山形県遊佐町にあり、そちらも国指定の重要文化財となっています。
敷地の入り口には樹齢100年以上と言われる赤松の木があります。全体で約1,500坪あり、旧青山別邸の周りには、坪庭、枯山水の庭園、アジサイの庭、シャクナゲの庭など、それぞれの方向に趣の異なる素晴らしい庭があり、四季折々の彩りが楽しめます。
また、「ゴメが鳴くから、ニシンが来ると~」の歌い出しで有名な「石狩挽歌(作詩家:なかにし礼氏、作曲家:浜圭介氏、歌:北原ミレイ氏)」ゆかりの地として、記念碑となかにし礼さん直筆の歌碑もあります。
貴賓館の建物に入ると、北海道ゆかりの日本画家による豪華な天井画が迎えてくれます。広間や和室・洋室があり、庭園を眺めながらニシンを使ったお重やお蕎麦などが楽しめます。
小樽貴賓館の庭園では春の桜から始まり様々な花木が四季を彩ります。
特に牡丹・芍薬や紫陽花は数多くの花を咲かせ、例年見頃な季節になると「牡丹・芍薬庭園」「紫陽花庭園」として公開されています。
5月下旬~7月上旬にかけて咲く牡丹・芍薬は牡丹40種430株、芍薬37種320株の合計750株。
7月上旬~8月上旬にかけて咲く紫陽花は約600株にもなり、期間限定のドリンクメニューなども販売しています。
秋の紅葉や冬の雪景色もとても綺麗なので、訪れる季節によって違った雰囲気の景観を楽しめますよ。
※気候の影響により開園・閉園の時期が異なりますので詳細は小樽貴賓館公式HPまたはSNSをご確認ください。
「にしん御殿 小樽貴賓館(旧青山別邸)」は、ニシン漁が小樽にどれほどの繁栄をもたらしたかを実感することができる貴重な建物なので、ぜひ小樽にお越しの際にはお立ち寄りください。
◆小樽貴賓館
北海道小樽市祝津3丁目63
バス:おたる水族館、祝津方面行「祝津3丁目」下車徒歩5分。
http://www.otaru-kihinkan.jp/