小樽情報
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小樽の坂道観光の前に、知っておきたいポイントとは

2024年07月06日

小樽は「坂の街」ということをご存知の方も多いはず。
小樽の小高い丘から見下ろすレトロな街並みと海のコントラストは、港町ならではの情緒深い景色として小樽観光の人気を高めています。そこで今回は「小樽の坂道」について、ご紹介します。

 

港町には坂が多いって本当?

北海道なら小樽や函館、全国で見ると長崎や神戸、広島の呉など、港町には坂の多い街が多くあります。もちろん横浜など傾斜が少ない港町もありますが、やはり港町=坂のイメージが強いものです。

近年都市開発技術が発展し、比較的新しい港町は平地でも発展できますが、明治初期から歴史のある港町には坂が多い傾向にあります。

これには諸説ありますが、「自然の地形を活かして、港町として発展したから」という説が有力です。船底が厚い大きな船を停泊させるには、海面からの深さが一定以上必要になります。一般的に岸壁のような急傾斜の港湾を作りやすい海岸線は、山からの傾斜があるのが特徴です。

また、砂浜の多い漁村、漁港のあるエリアでは、海岸線の近くに作業場や自宅があったほうが何かと利便性が高くなります。しかし、荒天時の安全性からみるとあまり平坦な地では住宅が危険にさらされる可能性も否めません。このため、海岸線から距離は近いものの、自然な傾斜がある程度あり、安心して生活できる街のほうが漁業に専念できるとされてきました。

 

小樽で行ってみたい坂道散歩コース

小樽にはたくさんの坂がありますが、体力と時間に合わせたお勧め散歩コースをご紹介します。

1)まずは入門編:「中央通」「船見坂」「外人坂」

◆中央通

小樽駅を出ると、すぐ目の前に「中央通」という道があります。ここには「坂」として名前がついているわけではありあませんが、小樽運河へ徒歩で向かおうとすると大半の人が通る坂道です。

まっすぐに伸びる道の向こうに小樽港や石狩湾を望むことができ、「小樽に来たんだな」という旅情が掻き立てられる場所です。
緩やかな勾配ではあるものの、約700mあり、運河へ向かうときは下りですが、帰りは上りのため、馴れていない人にとってはちょっと大変かもしれません。

 

◆船見坂

余裕があれば、中央通から大きな通り二本分西側にある「船見坂」へも欲張って足をのばしてみましょう。

1904年(明治37年)の大火の後、防火帯として作られたのがこの坂の始まりだと言われており、「小樽の漁師を待つ妻たちが、船を見下ろした」ことから船見坂と呼ばれるようになったそうです。住宅街と坂の下にある三角市場や中央市場とを結ぶ重要な道として小樽市民に親しまれており、中央通よりも漁港の風景やそこに住む人たちの日常を垣間見ることができます。

また、名称通りに小樽港に停泊している船を見下ろせるため、映画やドラマのロケ地などとしてもよく使われています。
ただし、道の傾斜は15%(約8.5度)となかなかハードです。全長自体は短く、バスなども通るので、無理のない程度に坂道を楽しんでみたい人にはお勧めです。

 

◆外人坂

漁業や海運などにご利益があるとされている小樽の「水天宮」から、120段ほどの石段を下りた先に続いているのが「外人坂」です。

かつてこの坂の近くにドイツ人貿易商・コッフさん一家が住んでいたことに由来してそう呼ばれるようになりました。コッフさんは、大正2年から道産の木材をヨーロッパに輸出していたゲルトネル商会小樽支店で働いていました。その後結婚し、一男一女をもうけけ、兄妹は近所の方に大変可愛がられて育ったそうです。

しかしながら、第二次世界大戦の影響で事業が滞り、戦後も事業再興がならず、昭和25年に日本を離れてゆきました。ところが、小樽市のホームページに掲載されている「おたる坂まち散歩」によると、コッフ家と小樽との縁はこれで終わらなかったようです。
平成5年に、小樽で生まれ育ったコッフさんのお嬢さん(エルガさん)が小樽を訪れ、懐かしい旧友に再会するなどし、再びコッフ家と小樽の縁が復活しました。その後、エルガさんは長きに渡り日独交流に尽力したそうです。

急な角度の長い階段が大変な坂ですが、登り切った先にある「水天宮」の境内は小樽港を一望出来るスポットとなっていますので、ぜひ坂と神社をセットで訪れてみてくださいね!

 

2)体力勝負!「地獄坂」「励ましの坂」「薬師神社の坂」

 

◆薬師神社の坂

豊川町と石山町の谷間にある手宮仲通を清水町に向かって歩くと、傾斜14%急勾配の上り坂になります。

手宮仲通には昔『手宮仲川』という川が流れており、そのためか周辺の地名も上流から源町(みなもとちょう)、清水町、豊川町と川の流れにちなんだものになったそうです。

2016年公開の映画『世界から猫が消えたなら』のロケ地にもなり、登り口付近には坂の名前の由来となった薬師神社があります。
坂の上からは小樽港と防波堤、その向こうに札幌方面へと続く美しい海岸線を眺めることができるので、是非お天気の良いときに登ってみてくださいね!

 

◆地獄坂

「地獄坂」は小樽商科大学に向かう「商大通り」にあり、夏になると自転車愛好家が全国から腕自慢(脚力自慢)に訪れることでも有名な坂です。

坂の起点は勾配10%程度ですが、大学の正門前辺りに来ると急に傾斜が増します。明治時代の大学草創期、教授陣や学生が、冬は深い雪を漕ぎ分けるように、夏は汗をかきながらこの坂を上っていたことから付いた名だそうです。
今では坂の両側に民家が立ち並んでいますが、当時は建物がほとんど無く、冬は吹き曝しで除雪もされないために、大変な苦労をして通っていたそうです。

道沿いにカフェや雑貨店などもあるので、勾配の割には気分転換しやすく、近くにはカトリック小樽教会 富岡聖堂(旧カトリック富岡教会)もあるので、坂道観光をしながらだとあっという間に登りきれるかもしれません。

 

◆励ましの坂

手宮のバスターミナルから手宮公園や小樽稲荷神社方向へと登っていく坂道で、手宮小学校を過ぎたあたりから勾配がきつくなってきます。

観光スポットというよりは市民の生活道路という色合いが濃い道で、最大斜度は24%(約13.5度)というスキー場のゲレンデさながらの勾配があります。これだけの傾斜ともなると、下りも一苦労。すれ違う人々がお互いをねぎらいあったことから「励ましの坂」と呼ばれるようになったそうです。

休憩がてらに振り返ると、反対側の山の斜面に張り付くように広がる小樽の街並みと、その間に延びる十間坂や浄應寺の坂が見えます。ぜひゆっくり景色を楽しみながら、休み休み上ってみてください。

 

3)公共交通手段も織り交ぜて「天狗山」

小樽の地形の傾斜を一番感じられるのは天狗山からの景色でしょう。小樽駅近辺からバスで約17分、そこからロープウェイに乗って山頂へ向かいます。

展望スペースから見える北海道三大夜景のひとつと称される夜景はまさに絶景。一目にして、小樽の街並みに傾斜が多いことが分かる景色を楽しむことができます。

天狗山は夏季シーズンの山頂では『森林浴コース』があり散策が出来たり、冬季シーズンにはスキー場として一年を通して様々な楽しみ方ができるのも魅力の一つです。

 

小樽の坂には歴史が詰まっている

坂の一つ一つに名前がついており、それぞれに歴史が詰まっています。

小樽が海やガラスの街として広まるまでの過程や、道の両脇に広がっている情緒ある風景に思いを馳せながら歩くと、「単に坂道を登った」という経験以上に思い出が感じられるでしょう。
ぜひ時間を多めに確保して、坂道を堪能してください。



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