2017年07月23日
様々な地場産業に支えられている小樽市。
かつて、道内の酒どころとしても名を馳せていた時代があります。
近年では様々な事情により、醸造を取りやめてしまった醸造所が増えていますが、それでも「やはり小樽の日本酒は美味しい」という名酒が数々現存し、小樽土産の定番アイテムの一つとしてもその地位を不動のものとしています。
今回は「酒どころとしての小樽の歴史」と「小樽の日本酒を楽しむポイント」についてご紹介します。
小樽で日本酒の醸造が本格化したのは、明治年代頃。
明治初期中期まで、お酒は北海道以外のエリアから買い付けるもので、北海道民にとっては贅沢品として位置していました。
しかしその後、実は北海道の気候は、以下のように酒造りにふさわしいことがわかりました。
・一年を通じて冷涼な気候であること
・美味しい水が潤沢に調達できること
・美味しい米があること
明治後期になると人口も増え、嗜好品の需要が高まりつつあることを受け、「小樽の地でも地酒を造れたら…。」との想いから「北の誉酒造」「山二わたなべ」「田中酒造」がそれぞれ地酒造りに乗り出しました。
昭和中期には、小樽地酒として造られた多くの名酒たちは道外にも進出するようになり、小樽の酒造りの最盛期を迎えます。
小樽の有名な酒蔵であった「雪の花酒造」も、他社の日本酒を委託醸造していましたが、自社ブランドの開発に乗り出し、小樽の名水を運ぶ河川の周りには多くの醸造所が立ち並びました。
その風景は「酒造銀座」とまで呼ばれるほどでした。
平成になると「若者を中心とした清酒離れ」と「杜氏(とうじ)。日本酒を醸造するための責任者となる職人のことの成り手不足」が目立つようになります。
その影響を受け、雪の花酒造が廃業、山二わたなべは醸造の委託先を模索すべく醸造部門を休止、北の誉酒造は旭川のオエノンホールディングスの傘下となり、ブランド名は存続するものの製造の拠点を小樽から移すこととなりました。
現在、小樽の地酒といえるのは「田中酒造」のみとなり、小樽の清酒醸造の歴史を今に受け継ぐ貴重な企業ともいえます。
現在唯一の、小樽の清酒酒造メーカーである「田中酒造」では、期間限定のものを含めると常時20種類前後の清酒や日本酒ベースのリキュールを販売しています。
その中でも人気の高いものを3つご紹介します。
田中酒造の代表銘柄ともいえる逸品。
キリッとした飲み口と、後から広がるほのかな甘みのバランスが人気の秘訣です。
本醸造、純米酒、大吟醸、純米吟醸、純米大吟醸の5種類があり、予算や口当たりの好みで自分に合ったお酒を選択することができます。
2016年から発売を開始した、まだ新しいお酒です。
寶川と同様に北海道産の酒造好適米「彗星」と小樽の良質な伏流水を使用しているのが特徴で、寶川が「熟練の技」を感じる深みがあるとすれば、北の一星は「まだ若々しい」ながらも、洗練されたやや辛口の風味を感じることができるお酒といえます。
こちらも、本醸造、純米吟醸酒、純米大吟醸があります。
小樽の女性をイメージしたラベルの中には、女性でも飲めるようにやや甘口に仕上げた日本酒が入っています。
純米吟醸酒の小樽美人以外にも、小樽を含む後志地方の農産物とコラボした「梅酒」「アロニア酒」などがあり、日本酒は飲みたいけれど、あまり辛口はイヤ…。という方に人気です。
純米吟醸酒以外のリキュールは、ソーダ割などにすると、さらに飲みやすくなります。
日本酒を選ぶときによく聞かれる「吟醸」「大吟醸」「純米」とは何なのでしょうか。
これには2つの条件の組み合わせがカギとなります。
醸造アルコールはサトウキビなどからできたアルコールです。
「せっかくの日本酒を他のアルコールで薄めるの?」と感じる人もいるでしょうが、日本酒独特の辛味やクセをマイルドにし、新たな味わいを提供するために使用します。
一方「米、米麹+水」だけで醸造した日本酒には「純米」がつきます。
日本酒ならではの深みを感じられる分、醸造にも手間がかかり、高価な商品となるのが一般的です。
コメの表面にはアミノ酸や糖分などの甘みを感じる要素が多く含まれています。
辛口で澄んだ味わいを提供したいのであれば、米を細かく削る必要があります。
この「米をどのくらい削って味をすっきりさせたのか」により、「吟醸」「大吟醸」などの名称が変わります。
田中酒造には主に販売を行う「本店」と見学も可能な醸造所の「亀甲蔵(きっこうぐら)」があります。
亀甲蔵では実際に醸造している場所をガラス越しではありますが見学ができます。
基本的に見学可能時間内であれば予約は必要ありません。
まずお店の前にある「仕込み水」を試飲し、一般的な水道水との違いを堪能したうえで、2階に向かいましょう。
見学コース内は、お酒の飲めない小さなお子様が一緒でも飽きないよう、壁にはクイズやイラスト解説をふんだんに掲示し、楽しんで醸造方法を知ることができる工夫が施されています。
また、店舗スタッフの手が空いていれば、解説付きで見学することも可能です。
所要時間15分程度。スムーズに説明を受けたいと思うなら事前に店舗へ問い合わせる方が良いでしょう。
見学コースは蔵の2階から醸造所を見下ろす形ですが、電動リフトも設置されています。
車いすや歩行に不安のある方は事前に連絡を入れ、対応をお願いすることをおススメします。
見学が終わったら、1階の直売所へもぜひ立ち寄りましょう。
主要な銘柄の試飲ができるほか、亀甲蔵でしか購入できない銘柄「亀甲蔵」も販売しています。
酒かすまんじゅうなど、お酒の苦手な人でも楽しめるお土産もありますよ。
観光のお供にぜひ日本酒を取り入れてみてはいかがでしょうか
田中酒造 亀甲蔵
住所:北海道小樽市信香町2番2号
電話:0134-21-2390
E-mail:kikkogura@tanakashuzo.com
営業時間:9:00~18:00(見学は17:30まで)
定休日:年中無休
JR:JR札幌駅からJR小樽駅 快速エアポート約32分普通列車約45分
JR南小樽駅から徒歩約5分
バス:中央バス ぱるて築港線など 「田中酒造亀甲蔵前」 下車すぐ
自動車:札幌から高速札樽道で約45分 駐車場乗用車70台・大型バス5台
当ホテルから車で約5分・徒歩約15分ですので、ご宿泊の際に足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
また、当ホテルの「マリーナバーレストラン」「こころ」「ベイラウンジ」「テラスブラッセリー」でも田中酒造の日本酒をご提供しておりますので、ぜひご賞味ください。