小樽情報
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次回公開は2024年の予定★旧日本郵船小樽支店

2018年11月10日

2018年11月から、国の重要文化財でもある旧日本郵船株式会社小樽支店が長期休館となりました。30年ぶりに耐震補強を含めた大規模な保全修理工事を行うためで、工事は2024年までの予定です。

しばらく見学できないので、休館期間に入る前に撮影した画像を使って建物をじっくりご紹介します。

 

 

 

◆旧日本郵船(株)小樽支店の概要と歴史

1904年(明治37年)着工、1906年(明治39年)10月に落成したヨーロッパルネサンス様式の石造2階建建築です。正面から見ると左右対称の構成となっていて、外壁には小樽天狗山産軟石や登別産中硬石が使われています。石造りなので重厚な雰囲気がありますが、細部に繊細さも感じられる外観です。設計したのは工部大学校造家学科(現東大工学部)の第一期生の佐立七次郎(1856~1922)で、明治30年頃より日本郵船の建築顧問となって各地の支店建築に携わっていました。

当時の小樽は、北海道開拓事業の拠点として商業港湾機能を拡充しつつあった頃で、この旧日本郵船小樽支店と同じように、一流の建築家たちが技術の粋を集めて建てた建築物がたくさん建てられました。

日本郵船株式会社小樽支店は1954年(昭和29年)まで営業し、1955年(昭和30年)に小樽市が建物を譲り受け、翌年から小樽市博物館として再利用され、1969年(昭和44年)3月には、明治後期の代表的石造建築として国の重要文化財に指定されました。

その後、1978年(昭和53年)には屋根の葺替工事、1984年(昭和59)年10月から1987年(昭和62年)6月までは外観・内部も含めた全面修復工事が実施され、往時の姿がよみがえりました。

 

◆1階:客溜り・応接室・営業室

入口を入ると、カウンターで仕切られた空間になっていて、手前が客溜り、カウンターの向こうが営業室として使われていました。右手の応接室や支店長室だったところが、今は見学者用の受付として使われています。

現在営業室は海運資料展示コーナーとして使われています。ブラケットライトや天井から吊るされたペンダントライト、木彫りが施された柱がクラシカルな雰囲気を醸し出してます。木材部分はワニス塗りでつやのある仕上がりになっています。営業室の奥には金庫室もあるほか、渡り廊下でつながった付属舎には炊事室は宿直室として使われていた部屋もあります。

 

◆2階:貴賓室・会議室

華麗な装飾が施された階段を上ると、2階には貴賓室と、その横には大きな会議室があります。この会議室は、1906年(明治39年)11月にポーツマス条約に基づく日本―ロシア間の樺太(サハリン)国境画定会議が行われ、歴史の貴重な舞台にもなりました。

貴賓室は、漆喰の天井とシャンデリア、深紅のカーテン、大ぶりな花柄の絨毯が印象的な、高級感のある造りになっています。床は寄木造り、壁は復元に大変苦労したといわれている菊紋様の金唐革紙が使われています。調度品なども含め、贅を尽くした豪華な空間です。

 

◆最後に

2階の廊下にはたくさんの窓ガラスが配されていますが、このガラスはとても古いものです。日光が射すと、ガラスの表面のかすかな凹凸が廊下の壁にやわらかな光として映し出されます。この光の揺らぎはとても癒されるので、いつまでも見ていたくなるとっておきの場所です。

しばらく見学できないのは残念ですが、次回の再公開を楽しみに待ちたいですね。



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