2024年09月28日
小樽には当時の最先端の技術や洗練されたデザインが施され、優れた文化遺産として高く評価されている数多くの歴史的建造物が現存しています。
建築用途としては漁家、倉庫、店舗、銀行、教会など…多種多様となっており、『堺町通り』にも数多くの歴史的建造物を利用した店舗があり、観光スポットとしても人気を博しています。
人気観光コース『堺町通り』を散策するときにオススメのフォトスポットに引き続き、今回は堺町通りにある歴史的建造物をご紹介します。小樽市の歴史的建造物に指定されている建物には必ず紫色の案内版が出ていますので、1つ1つ読みながら行くと、明治期から昭和初期までの小樽の繁栄の歴史がとてもよく分かるのでおススメです。
※ご紹介する情報は令和6年09月27日現在のものです。
ガラス製品を中心に販売している『大正硝子館』では、数ある店舗の中で『本店』と『くぼ家』のふたつの店舗において、小樽市指定の歴史的建造物を利用しています。
『本店』の『旧名取高三郎商店』は、明治37年(1904年)の稲穂町大火以降に山梨県出身の銅鉄金物商・名取高三郎が建てた店舗です。
裏手に住宅や倉庫を連ねており、角地に建ち、西側と南側に開いた形で防火のための袖壁(うだつ)を設けています。札幌軟石が使用された外壁は上部壁体を鉄柱で支える構造で、小樽の明治後期の代表的商家建築といえます。
『くぼ家』の『旧久保商店』は小間物雑貨卸を営む久保商店の店舗として建てられました。
久保商店当時の写真によると、道路側の下屋は母屋から蔵(木造石造)まで一体に続いていて、蔵は前後に2棟並び、母屋の1階は店先として開放できる引戸が入っていました。
現在は和風商店の趣を残しながら、小樽ガラスの器を使用したレトロカフェとなっていますので、観光のひとやすみにもオススメです。
明治41年(1908年)に新たに支店店舗として建設されました。
於古発川(おこばちがわ/妙見川と呼ばれることもあります)沿いにある「寿司屋通り」と「堺町通り」とが交差する角にあるため、ここから小樽観光のメインストリートとも言える『堺町通り』がスタートする印象があり、通りの北端の目印ともなる建物です。
木骨石造りの2階建てで、屋根は瓦葺き。外壁は煉瓦タイルと窓や入口の柱の白い部分とが縦じまになっていて、少しカジュアルな見た目です。ただし、建設当初の外壁は石張りだったそうなので、今よりもだいぶ重厚な雰囲気だったのかもしれません。内部には吹き抜けのホールがあり、見上げると天井に組まれた木骨が見えます。
2つの通りに面した一角を落として入口が作られているため、建物全体は5角形をしています。入口上部の両脇にある古代ギリシャ風の円柱は、上にいくほど細くなる銅張りで安定感があり、三角破風の下にはレリーフが彫られていて、レトロ感を醸し出しています。
小樽市の歴史的建造物に指定されており、資料によると設計は池田増治郎とのことですが、他にどんな建物を手掛けた方なのか、これ以上の情報は見つかりませんでした。
旧百十三銀行が北海道銀行(後に北海道拓殖銀行に統合/現存する北海道銀行とは別の銀行)に統合されたのち、この建物は住友銀行小樽支店として使われました。住友銀行小樽支店が閉鎖された後は、看板などの広告・デザインを手掛ける会社、老舗菓子店の千秋庵と移り変わり、平成15年(2003年)に雑貨やアクセサリーを販売する『小樽浪漫館』となって今に至っています。
小樽には、『旧第百十三国立銀行小樽支店』と『旧百十三銀行小樽支店』の建物が残っています。紛らわしいですが、第百十三国立銀行が1897年(明治30年)に普通銀行となって百十三銀行に改称されたので、「第」が付く方が古いことになります。
第百十三国立銀行は、1878年(明治11年)に函館に設立され、翌1879年(明治12年)に開業した北海道初の地場銀行です。旧小樽支店の建物は、1895年(明治28年)に建てられました。
施工・設計者は不明ですが、木骨石造の平屋で、隅角部には色の異なる石が算木積み風にデザインされ、瓦ぶきの寄棟屋根には槍のような特徴的な飾りが2本付いています。当時流行していた和洋折衷様式の建物で、いわゆる”擬洋式”であるため、若干ちぐはぐな印象が否めませんが、それがこの建物の独特な雰囲気を生んでいるのかもしれません。
あまり銀行らしさが感じられない、可愛らしい小さな建物ですが、窓にはめられた鉄格子と、軒下にある連続した分銅模様のレリーフが、銀行としての面影を残しています。
業務拡大に伴って、1908年(明治41年)に近くに新築した大きな建物に支店が移転し、この建物は木材貿易商事務所や製茶会社の建物などとして利用されていました。小樽市の歴史的建造物に指定され、和菓子店「花月堂」の堺町店として利用されたのち、現在は、小樽のオルゴール専門店『オルゴール堂Ⓡ海鳴楼』の本店となっています。
店内は明るい雰囲気で、小樽でしか手に入らない海鳴楼ブランドのハンドメイドオルゴールが販売されています。
他にもこのような旧銀行を利用した歴史的建造物は、堺町通りからも近い『日銀通り周辺』にもございますので、ぜひ足を運んでみてください。
小樽の代表的なおみやげや観光スポットとして有名な『小樽オルゴール堂』では、小樽市指定の歴史的建造物を利用した店舗として『本館』と『堺町店』と『遊工房』があります。
『本館』は北海道有数の米穀商であった『旧共成(株)本社社屋』として大正4年(1915)に建てられました。
石造の多い小樽では珍しい煉瓦造の建築となっていて、特徴的な壁の褐色の煉瓦やアーチ状窓のキーストーン(要石)、開口部と隅部に積んだコーナーストーンが見どころとなっています。
『堺町店』は時計卸商・初代岩永新太郎の『旧岩永時計店』の店舗として建てられました。
平成3年に2階のバルコニーや半円アーチ扉、手摺などが修理され、ほぼ創建時の姿となる改修がされ現在まで至ります。
明治時代としては珍しいバルコニーがあったりと和洋折衷でモダンな造りで、細部にもデザインが施され、瓦葺きの屋根にいる一対のシャチホコは商店では珍しい装飾となっています。
『遊工房』は大正10年(1921)に建てられた『旧上勢友吉商店』の店舗で、小樽に現存する数少ない本石造3階建の店舗建築となっています。
寄棟の瓦葺き屋根にドーマ(屋根窓)を設け、正面壁にキーストーン(要石)を強調した窓を並べた意匠が見どころです。
現在は手作りオルゴールの体験工房となっていますので、歴史的建造物巡りがてら自分だけのオルゴールを制作し旅の思い出にするのもオススメです。
他にもガラス製品を中心に販売している『おたる瑠璃工房』や『北一硝子三号館』、堺町通りから少し歩いたところにも数多く点在していますので、ぜひ小樽の歴史を感じながらいろいろな歴史的建造物を巡ってみてください。