2024年08月30日
明治後期から昭和初期の小樽は、「北のウォール街」と呼ばれるほどの経済都市でした。最盛期には25行もの銀行が小樽に支店を出し、北日本随一の金融都市としても栄えていました。
現存する銀行の建物の多くが小樽市の歴史的建造物に指定されており、現在別の用途に活用されています。
今回は日銀通り周辺にある旧銀行の歴史的建造物をご紹介します。
▶「北のウォール街」についてはこちらで詳しくまとめていますのでぜひご覧ください。
小樽市色内にある「旧三井銀行小樽支店」の建物は、小樽市の市指定有形文化財に指定されています。1927年(昭和2年)に竣工した地下1階地上3階建ての鉄骨鉄筋の建物で、設計は当時日本の建築界をリードしていた曾禰中條建築事務所(曾禰達蔵・中條精一郎)によるもの。外壁には花崗岩を用い、アーチ窓を連ねたルネッサンス様式で、関東大震災直後の起工だったため当時最先端の構造と耐震技術が用いられています。
2002年(平成14年)に銀行としての営業が終了しましたが、現在は「小樽芸術村」の1部として公開されています。内部は、1階に吹き抜けの広い客溜や営業カウンター、金庫室、2階には回廊が巡らされ、会議室や応接室が配されています。細部に緻密な意匠が施されているほか、天井の石膏彫刻が秀逸なので、ぜひご覧ください
上記の旧三井銀行小樽支店と同じエリアにあり、小樽市の歴史的建造物に指定されています。日銀通りに面しており、文字通り「北のウォール街」の一角を担う建物でした。国会議事堂を手掛けた矢橋賢吉の設計により、大正12(1923)年に竣工。地下1階地上4階建ての鉄筋コンクリート造りの建物で、「蟹工船」で有名なプロレタリアート文学の作家・小林多喜二が働いていたことでも知られています。
一時期はホテルとして活用されていたこともありましたが、現在は「小樽芸術村」の中の1つ「似鳥美術館」として、日本画や洋画、木彫などが展示されているほか、地下はアールヌーヴォー・アールデコ グラスギャラリーとなっています。
正面入り口のアールの曲線が特徴的な建物です。1階は、2階までの吹き抜けになっていて、古典的デザインの白い円柱が6本立ち並んでいます。荘厳かつ重厚なうえに、開放感もある内観にぜひ注目して見学してください。
旧三菱銀行小樽支店は、1922年(大正11年)に建てられた鉄筋コンクリート造りで、設計者は不明ですが、清水組が施工を請け負ったようです。
建設当時は外壁としてレンガ色をしたタイルが貼られていたそうですが、1937年(昭和12年)頃に外観の色調が変えられ、今に至っています。1階には、ギリシャ・ローマ建築風の柱が6本並んでいて、柱と柱の間にはクラシカルな窓がはめられています。
現在は北海道中央バスが所有し、「小樽運河バスターミナル」として活用されています。また、建物内には、小樽名物”ぱんじゅう”で有名な「桑田屋」などがテナントとして入っていますので、バスを待つ時間も退屈せずに過ごすことができます。
運河に近い上に、主要観光地を巡るおたる散策バスや、おたる水族館や小樽天狗山方面へのバスも発着しているので、地元の方だけではなくて、観光のお客様にも使い勝手が良いターミナルです。ぜひ、小樽にお越しの際には、立ち寄ってみてください。
「日本銀行旧小樽支店(現:金融資料館)」は、かつては北日本随一の金融都市として栄えていた小樽に本店や支店を構えていた銀行の中でも、ひときわ存在感のある銀行でした。
辰野金吾や長野宇平治などが設計に携わり、1912(明治45)年に日本銀行小樽支店として竣工。構造は煉瓦造り2階建てで、表面にモルタルが塗られ、石造り風に仕上げられています。北に面した屋根の上には4つの小さなドームがあり、小樽港を見渡せる南東の角には望楼が配されているのが特徴です。
夜間にはライトアップも行われており、特に冬のライトアップは大変綺麗なので必見です。
金融資料館については、こちらで詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
日銀通りに面した小樽市指定の歴史的建造物です。1912年(明治45年)建造、地下1階地上2階建ての石造り亜鉛葺きで、旧北海道銀行本店の建物として建てられました。
外観は、基壇部分は石造りの石が見えており、その上の外壁はモルタル塗装。ルネッサンス様式で、銀行建築特有の重厚さがあります。玄関や窓まわりにはアーチ型の石組みが施されており、ファサード(正面)の左角は丸くえぐったデザインになっています。
設計したのは、東京駅などの設計で知られる日本近代建築の父とも呼ばれる辰野金吾の弟子・長野宇平治で、明治から大正にかけて日本銀行各支店の建物を多く手掛けています。この旧北海道銀行本店の斜め向かいに建つ旧日本銀行小樽支店(現・金融資料館)も、辰野金吾と長野宇平治を含む弟子たちの設計です。
後に、裏手に増築された部分は鉄筋コンクリート造りですが、表通り(日銀通り)からはほとんど見えないので、外観は建造当時の姿をほぼ留めています。
旧北海道銀行は、小樽に本店を置いていた銀行で、現存している「北海道銀行」とは全く別の銀行でした。1944年(昭和19年)に北海道拓殖銀行に吸収合併されて消滅してしまったため、その後この建物は北海海運局や中央バスの本社ビルとして使われ、1996年(平成8年)からはワイン&カフェレストラン「小樽バイン」となっています。
内部はレストラン&ショップに改装されていますが、石と木を使い、小樽らしいレトロな雰囲気になっています。
他にも観光地として有名な堺町通りには「旧第百十三国立銀行小樽支店」や「旧百十三銀行小樽支店」が旧銀行の歴史的建造物として現存しています。
ぜひ小樽にお越しの際には、小樽がかつて「北のウォール街」と呼ばれていた頃を想像しながら訪れてみてください。